先に教室に戻ったはずの久我くんが、どうして……。
それよりも、涙を見られたくなくてとっさに顔をそむけた。
「蒼先輩と話してるのが見えたから……」
……戻ってきてくれたんだ。
その優しさと言葉が胸にしみて。
我慢していたものが、瞳から零れ落ちた。
まっすぐに落ちたそれは、床に落ちてはじけ飛ぶ。
「……」
胸が苦しいよ。
やっぱりつらいよ。
こんな現実、受け止めたくないよ。
一度落ちてしまった涙の止め方なんてわからなくて。
ポタポタと落ちる涙を、滲んだ目で見つめるだけ。
すると、久我くんはあたしの手をつかんで歩き始めた。
「……っ」
突然動いた体に、足を取られそうになりながら引っ張られるままついていく。