「蒼ー、何やってんだよー。次移動だぞ」
そのとき、学食の入り口から声がかかった。
「やべ、じゃあまたな」
「……うん」
小さくうなずいたあたしに。
―――ポン、と手のひらを頭の上に落とすと、太陽みたいな笑顔を残して去っていった。
「……っ」
温かい余韻が、涙腺をもっと緩める。
こんな風にされたら、諦めたいのに諦められなくなっちゃうよ。
彼女がいる人を想い続けるなんて、迷惑なことしたくないのに……。
どうしよう、蒼くん……。
「……永井?」
あたしを呼ぶ声が聞こえた。
ハッとして顔を上げると、目の前にいたのは久我くん。
「大丈夫か?」