その瞳の奥には、不安の色が混じっている。
高校生になってから、こんな蒼くんの瞳を見るのははじめて。
「倒れたって聞いて、びっくりした……」
不安げに揺れる瞳は、いつかの蒼くんを彷彿とさせる。
お兄ちゃんのことで、さんざん蒼くんには心配をかけてきたのに。
あたしのせいで、またこんな表情を蒼くんにさせているのかと思うと、自分が腹立たしい。
「だ、大丈夫っ!」
はっきり言って、自分でもなにが起こったのか分からない。
具合が悪かったわけでもないし……ただ、久我くんと教室で話していたら苦しくなって……どういうわけか、ここにいる。
でも今は、なんともない。
苦しいわけでも、頭がいたいわけでもない。
蒼くんに心配をかけたくなくて、体を起こすと背中に手を添えてくれる。