「蒼先輩、兄貴の友達なんだろ?」
「あ……」
そういえば、そんなこと言ったっけ……。
「兄貴は知ってんの?」
「……え、と……」
まさかそんなことを言われるとは夢にも思ってなくて、答えに困ってしまう。
だって、そのお兄ちゃんは、もういないんだから。
……痛い……胸の奥が痛い……。
「親友の妹とか、結構脈アリなんじゃないの?」
「…………」
知らないんだから、悪くない。
久我くんは、まったく悪くない。
「そんなに好きなら、兄貴に取り持ってもらえばいいのに」
けど。
久我くんが、"兄貴"と繰り返すたびに。
胸が苦しくなって。
呼吸が出来ないの……。
この間、学食で伊織ちゃんにお兄ちゃんの話題を振られた時と同じ。
ううん。今日はそれ以上に苦しくて……。
「……っ」
「……永井?」
久我くんが呼ぶ声が、どこか遠くに聞こえてくる。
「おいっ、永井!」
そして、目の前が真っ暗になった──。