「ポエムってんじゃねーよ、ばーか」
トゲトゲしい声とともに、頭を思い切り叩かれた。
バシンという子気味いい音。
相手は俺のHPを削る気だったのだろうか?
ふははは。
残念だったな。
多少の痛みはあるが、スーパー幸せモードとなっている今の俺には大したダメージがないんだよ。
勝利の笑みをかましながら叩いてきた本人を振り返りると、ゲンナリした顔がそこにあった。
それは俺の親友・亮介(りょうすけ)の顔だった。
「お前さっきからうるせーよ、マジで。
世界はバラ色だの、美しいだの。
しまいには最近現代文で習ったあの言葉まで使いやがって」
しまった。
聞かれていたか。
ていうか、そもそも口に出していたのか、俺。
しかも、某著名人が作中で使ったとあるフレーズを俺が使っているのがバレた。
なんてこった。
著察権の侵害で逮捕されてしまう。
(梶井基次郎著『檸檬』より、〝不吉な塊〟という表現引用)
一生の不覚...。
「しかもその笑顔なんなの?
叩かれて満面の笑みとか、ガチドM?」
「あ、そこは否定させて。
俺はガチじゃなくて、マイルドなM」
「やめろ、お前の性癖なんか知りたくねぇ」