次の日、いつもの空き教室に行けばそこは冷たい空気が流れていた。

身も凍り付くような、居心地の悪い空間。


「先輩」


いつもは笑顔をまき散らす明るい先輩も、今日はご機嫌斜め。

いちご牛乳の紙カップにさしたストローを加えて、スマホをいじっている。

決して俺の方を見ようとはしない。


…これは相当、怒らせた。

ああ、面倒なことになった。


「怒ってるんですか」


そう尋ねれば、先輩は顔をあげた。

茶髪の短い髪がまるで子犬のように跳ねるけど、その口元はへの字に曲がったままだった。

ついでに頬を膨らませて、思い切り不機嫌な顔をしている。


…これが年上だなんて到底信じられない幼さだ。



「ねえ、先輩ってば」


しかし先輩はこちらに顔を向けるどころかそっぽを向いた。


「川島なんて大っ嫌い」


俺は溜息を吐いた。


…これだから先輩を怒らせると面倒だ。