それは、朝のホームルームの時間だった。

担任 「はーい注目ー」

1-1女担任の岡山先生がパンパンと手を叩き注目させる。

静かになったところで先生は切り出した。

担任 「今から5月にある林間学習の班決めしまーす」

途端、男女共々騒ぎ出した。

咲 (あーめんどくせぇ)

咲はため息をついた。お泊まりには嫌な思い出しかない。

担任 「おいこらきけよー!班は6つ、ひと班に男女合わせて4人ね。男女3女子1とか論外だから」

男子 「わーってるよせんせー!」

女子 「つか岡っちどんな妄想してんの!」

担任 「こーら岡っちじゃなくてお か や ま!とりあえず、くじ引きで班長は決めたから。あとはまぁ適当に…委員長に任せる」

桜田 「承知しましたわ」

担任 「よし、じゃあ班長言うぞー」

教室が一瞬でシーンとなった。

担任 「まず、一班の班長は」

誰もがゴクリと唾を飲んだ。

咲 (ま、俺は無いとしてーー)

担任 「月下 咲!」

咲 「えええええええぇええ!?!?!?」

咲は思わず椅子ごと仰け反った。

咲の驚きぶりに担任がぶっと吹いた。

担任 「そんなに驚いたか?まぁ他の先生からの評判がなぜか良かったんだよ。じゃ、よろしく」

咲 「ええええ!?ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

担任 「なんだ?異議はないだろう、続けるぞ。二班の班長はーー」

咲 (なんっっっで俺がこんなことをーー!!)

この3年間、ひたすら笑顔を作り流れに任せて過ごそうと思っていたのに。

早くも咲の人生設計図が崩れようとしていた。

咲 (これじゃすっごい目立つじゃん…!!)

担任 「ーーはい次、六班の班長はーー」

ここで咲の意識が戻ってきた。

担任 「月詠 都」

咲 (……!?)

月詠 「…わかりました」

咲 (月詠さんと…!!)

都の方をチラリと見ると班長になることなどどうってことないみたいな顔で本を読んでいる。

咲 (余裕…!!)

咲は都の余裕ぶりに感心した。

同時に喜びも湧き上がってきた。

ジーッと見ていた咲の視線に気付いたのか、都が横目で見た。

月詠「…何」

咲 「あっいや、よろしく!」

都はフイッと前を向いた。

月詠 「別によろしくするつもりはない」

咲 (うっ…毒舌…!)

林間学習まで残り1ヶ月ほど。

楽しみである。