咲 「では俺歌いま〜っす☆」

咲はマイクを手に取り歌い出す。

咲が歌い出した途端、キャーッ!と黄色い悲鳴が上がった。

咲 (ふっふっふっ…よしよし、女子からの受けはいい感じだな)

咲は歌った。そして曲は終わった。

女子 「ねぇきいて!さっきトイレに行った時に隣の部屋見たんだけどぉ」

女子 「あのーなんだっけ?あ、月詠さんがね一人でいたの!」

咲 (え…?)

咲はドキッとした。隣の部屋に、都さんがいる。

男子 「なんだそれこっわー!」

女子 「入学早々ぼっちカラオケェ?まじウケるんだけど!」

女子 「キャハハハ!」

バンッ!!

女子 「…え、どしたのさっくん」

咲はなぜか苛立っていた。

咲の異様な空気に怯み静かになる。

咲 「…トイレ」

咲はドアをバタンと閉じた。

男子 「なんだ…らしくねーな」

女子 「と、とりま再開しよ!次誰が歌うー?」

また男女の騒ぐ声が聞こえ出した。

咲 (チッ。らしくねぇ…!)

咲は隣の部屋を覗いた。

そっと耳を立てると都さんの歌声が聞こえてくる。

相変わらず、人を魅了する美しい声だ。

…と、目が合った。

咲 (うぉっやべっ…)

咲はサッと隠れたが、あっさりバレてしまった。

都 「人の歌ってる姿を盗み見るなんて、最低ね」

歌ってる時とは違う、冷ややかな声。

咲 「ご、ごめん」

都 「ふん。あなたたち、隣で歌ってるんでしょ。はやく戻ったらどう?」

と言って都はドアを閉めようとした。

咲 「待って!」

そのドアを咲は慌てて掴んだ。

都 「なに」

咲 「い、一緒に歌お?」

都 「は?」

咲 「デュエットしよデュエット!ね、1回だけでいいから!」

なぜか無性に都の歌が聞きたかったので咲は半ば強引に中に入った。

都 「…1回だけ」

都はふんと鼻を鳴らし席に座った。