「はあ」


(やばい、逃げてしまった)


葉月くんに声掛けられんじゃないかと思うと、嫌だったので思わず屋上庭園まで逃げてきてしまった。


「………」


私って何かあるたびに逃げている気がする。


本当は良くないのにダメだって分かってるのに、どうしても逃げたくなる。


(ダメだな、私…)


葉月くんは慣れてるから平気なのだろうけど、私は平気じゃない。



そもそも男の子との関わり方が分からない。



いきなりされたら怖いだけだ。


「……さむ」


もうすぐ12月になるせいか、昼だけど空気は冷たく肌寒い。




「戻ろうか」


あと、お腹空いた。


お昼食べてからこればよかったっと少しだけ後悔が出てしまった。


「よし」


やっぱり戻ってお昼を食べてこようとベンチを立ちがると、出入り口の扉がガチャと開く。


「あ、やっぱ居た」


「…Why?」


なぜここに来る?


「へっなぜ英語?」


(どうしよう、どうしよう…)


「あのさ、話したい事があってさ、昨日の事なんだけど」


(よし逃げよう)


さっきと同じ考えが脳裏に走り、そのまま逃げる体制へと持っていった。


「ちょっ…またあ!?」


勢いを付けてとりあえず、屋上庭園を周るように逃げれば追ってくる。


そうすれば、扉にたどり着くはずだ。


「なんで逃げるの!」


それは、葉月くんが近付いて来るから。


ていうか、追いかけてくるのはなぜ?


葉月くんの方を振り向くと、呆れたような表情で頭を抑えていた。


(…なんで?)


まるで捕まえる気もなさそうだ。


「?」


捕まえる気がないのかもしれない。


そう受け取り安心した表情のまま、出入り口の方へと向った。


私はこの時ある勘違いをしていた。



葉月くんが何も考えなしで諦めたという大きな間違いを。


それはおそらく、私の行動を理解していたから。



扉に手を伸ばそうとしたその時、どこからかと手が伸びてきドンと壁に追いやれる。


「……あ、あ、あああ」


「捕まえた♪」


葉月くんは天使のような笑みだけど目が笑っていなかった。


悪魔の微笑みと言った方が正しいぐらいに。