「うわ痛そう…大丈夫?」



リビングに通されて、左手が使えない葉月くんの代わりに峰流さんがお茶を出してくれた。



何度もお邪魔ているみたいだから、勝手も分かっているらしい。



「いってー!?」



「あ、痛いんだ」



「痛いよ! つーか握んなよ!」



峰流さんは何も考えず、ぎゅっと葉月くんの左手を握って、激痛に悲鳴を出したようだ。



「てか、なんで怪我したの?」



「…!」



「……別に誤って包丁突き刺さっただけだよ」



「…そう」



今、本の少しだけ間があったのは気のせいじゃないと思う。



篠原くんも疑惑の目を向けられているけど、峰流さんがいるからあえて口に出さないようにしている。



気付いているのかな、篠原くん。



「………」



峰流さんがトイレに席を経った時、篠原くんはここぞばかりに葉月くんに尋ねる。



「ねえ、ニュース…あれなんかあったんでしょ?」



「…何が?」



「とぼけるつもり? 今更」



頬杖を付きながら葉月くんはそっぽを向いて、わざと知らない振りをしている。



「それ、誰にやられたの? あの人?」



篠原くんの問い詰めに葉月くんはポツリと「別にやられた訳じゃないけど」と漏らす。



「しょうがないじゃない……他の方法なかったんだから」



「…優弥?」



「あ、あの……」



2人のこういう危うい雰囲気を出す時がよくある。



だいたいはいつも白石さんの時が多いみたい。



一緒にいる事も話すのもたまに程度だからよくは知らないけど、近くを通ったりやチラッと見た際に危うい雰囲気を出している時があるから。



「優〜」



「ひっつくなって」



戻ってきた峰流さんが座っている葉月くんの後ろから抱きつく。



「………」



峰流さんは葉月くんの事が好きなのか、引っ付いたりと距離が近い場面をよく見かける。



白石さんがいた時は一度もなかったのに。



白石さんどうなるのだろう?



同じように前科が付くのだろうか?