「あ…」



昼休み、篠原くんが1人で自分の机に座っていた。



(峰流さんや他の友達はいない)



どこかに行っているんだろう。



今がチャンスだと思って彼に近付く。



「あの、篠原くん」



私が篠原くんに近付く事など今まであっただろうか。



ううん、ないと思う。



「…美沙樹。ねえ、君、何か知ってるの?」



「えっ」



声を掛けて最初に向けられた言葉がそれだった。



「何の?」



「ニュース…でしょ?」



「あ…」



そうか、篠原くん知っているんだ。



私が美実さんと血を繋がっている家系だと言う事を。



「あの、お願いがあるの」



「何?」



「葉月くんの家教えてほしいの」



「……じゃあ、何か対等なもの俺にしてくれる?」



「えっ?」



対等なものって…何をすれば?



本気で何をすべきか考えていたら「フッ」と笑いを漏らす。



「いや、冗談だけど。別に本気じゃないから」



「そうなんだ」



本気で考えてしまって少し恥ずかしい気になった。



「まあ、どうしてもしたいんならお菓子くれればそれでいいよ」



「うん」



篠原くんは私の事嫌っているんじゃないかってずっと思っていた。



白石さんの事が好きで、葉月くんと親しくする私が気に入らないんじゃないかって。



「ねえねえ、今日優の家に行こうよ。お見舞いに」



「えっお前も来んの?」



「ん?」



峰流さんの突然の乱入とお誘いに篠原くんは少しびっくりする。



私も同じような事を篠原くんに聞いていたから。



「あれ、美沙樹さん? なんでいるの?」



(まあ、いっか)