同居人=アイドル 同居人≠彼氏 ~性悪アイドルに恋しちゃいました!?~

「いや、逆だから。お前の存在感がムダに主張してんだよ。もっとオーラを消せ。もっとどころじゃない。すべて消せ。つーか存在を消せ」


はぁ!?


「ふざけんじゃないわよっ!エセアイドルに言われたくないねっ」


こんな性悪と1ヶ月以上どう生活しろと!?


私、夏休み明け死んでるよ、絶対……。


それかストレスで気が狂ってテンションおかしくなってるか。


そのどっちかだろうな。


「エセアイドル?アイドルなんか誰でもそんなもんだろ。アイドルにキャーキャー騒いでる女子がキモい。お前含めてな」


このヤロ……。


沙羅をバカにされたみたいで腹が立つ。


「てか私アイドル嫌いだし!嘘臭い笑顔振りまいてるバカ野郎なんか嫌いだし!」


この男はムカつくことしか言えないのか!?


もうホント朝から疲れる。


「そういう仕事だ。エンターテイメントだ」


「エンターテイメントって言ったら許されると思ってるでしょ!私は騙されないからね!」


この詐欺師!
「お前気ぃ強すぎ」


チッ


「お前性格悪すぎ」



どうだ、うまいこと言い返せたでしょ!


「知ってる。それを自覚してる俺は、お前よりマシだな?つーことで。」


……何よ。


「お前は俺の使用人だ。奴隷じゃないだけありがたいと思え」
「はぁ?何で私が」


むしろアンタが私に仕えろっ!


「年下が年上の使用人だ。当たり前のことだろ」


つくづくムカつく野郎だ。


「あんた何歳?」


絶対中学生のクソガキだ。


「17」


同い年じゃん。


「私も17何ですぅ。同い年でーす」


「学年的には俺の方が上だから。早生まれなんだよ。残念だったな、ブス」


このヤローー!!


・・・。


1度冷静になろう。


こんな頭に血が上ってたらまともに会話ができやしない。


よし。


状況確認だ。


今、この性悪は私にこう言った。


〝使用人になれ〟


と。


そして、同い年だということが判明した。


そして、私は4月2日生まれ。
「あんた誕生日何月何日?」


「4月1日」


よしキタ!


1日差!


「私は4月2日生まれなの。1日しか違わないの。年下とかいう概念は通用しないっ」


どうだ!


論破っしょ?


「さすが国語2点 数学0点 英語10点 理科1点 社会5点 のバカだな。それで勝ったつもりか」


っ!?


「何で知ってるの!?」


顔がみるみる赤くなっていくのが分かった。


こんな性悪に知られるなんて……。


なんたる大失態…。


「ゴミ箱に捨ててたの見た」


やっぱりゴミ箱に捨てたのは失敗だったか……。


「どーせ親に見せてねぇだろ?」


その通り…。


怖くて見せれないもん。
「そのバカな点数をバラされたくなければ使用人になれ」


……うぅ…。


バラされるのは嫌だ。


だけどこの性悪の使用人なんて余計嫌だ。


「てか、俺の使用人なんて幸せだぜ?あんな人気者の使用人だぜ?メリットしかねぇよ?」


このナルシストめ…。


「えぇ、えぇ、やってやりますよ!最悪最低性悪ナルシスト詐欺師エセアイドルクソアイドルの使用人をね!!」


絶対コイツ頭良い。


私があぁ言えばこういう、っていうアレがもう頭のなかにできてるんだよね。


悔しいけど!


「じゃ、朝飯作れ。俺朝は少なめでいいからよろしく」


クソ野郎…。


ムカつくぅぅ!


お母さーーん!


早く帰ってきてよぉぉっ。


今年の夏休み、地獄決定です。
そして、名案を思いついた。


今から作る朝ごはん、性悪男の分だけ塩を大量に混ぜてやろう。


こりゃ名案。


さ、何作ろう。


スクランブルエッグくらいの軽さでいいのかな??


それにプラス昨日の残りのサラダでいいかな。


ドレッシングを違う味にすればいいし。


……って、私なに真剣に性悪のためにメニュー考えてるんだ。


これじゃ性悪の思う壺だ。


危ない危ない。


私は朝からガッツリ派だからとりあえず冷凍の唐揚げでも解凍しようかなー。


4つくらいでいいか。


お皿にカチカチの唐揚げを乗っけてレンジでチンする。


その間にスクランブルエッグを作る。


もちろん、性悪の分には塩大さじ2杯入れた。


で、サラダを冷蔵庫から出して、ドレッシングをかけて、完成。


唐揚げもちゃんと解凍完了っ!
いい主婦になりそうだよ、私は。


「できたよ」


スクランブルエッグは二人分、サラダは1つのお皿に入ってるのを自分で取り分けて食べる、唐揚げは4つとも私の。


それをテーブルに並べる。


もちろん、塩入は性悪の席に間違いなく置く。


完璧。


「冷蔵庫の中のオレンジジュース取れ」


塩入スクランブルエッグを作れて満足な私は、性悪の腹立つ言動にも苛立ちを覚えなかった。


「はいはい」


オレンジジュースを手渡して、私も席につく。


「いただきまーす」


ノーマルスクランブルエッグを食べようとお箸を伸ばしたとき。
「俺そっちがいい」


・・・はい?


「お前がこっちのスクランブルエッグ食え」


………それは困る。


大いに困る。


だって、性悪の方のスクランブルエッグには塩が大さじ2杯も入ってるもん。


死んでしまう。


そんなもの食べたら。


「どっちも同じだろ?まさか片方だけ塩入りとかじゃねぇんだから」


不敵に笑った性悪。


コイツ、気づいてやがる。


「どっちも同じだから、自分のを食べたらいいじゃん」


絶対、塩入りなんて食べたくない!


「お前に拒否権はない。俺が選ぶんだよ」


性格悪そうな笑みを浮かべる性悪。


拒否権ないとかどこの少女漫画だよっ!
拒否権ないとか言ってキャーって言われるのは少女漫画の能天気なヒロインだけだっつーのっ!


現実世界でそんなこと言い出したら、人権無視だし!


違憲だし!


「いや、私もこっちがいいから」


これだけは譲れない。


塩入りなんて勘弁してよね。


「無理。それ俺のだから。じゃ、お前こっちよろしく」


強引にスクランブルエッグを交換させられた。


「………ムカつく」


「知ってる」


チッ


じゃあそのひん曲がった性格を改めなよね。


というか、よくここまでひん曲がるものだ。


ある意味感心するわ。

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