初めて、親に言えないようなことをする気がする。

私の家は俗に言うお金持ちとやらで、私には今歳の近い使用人とやらがついている。
その人の目さえ盗むことが出来れば…。


「今夜、帰りが遅くなるの」

そう言いながら、今月のお小遣い全額を入れた封筒をこそりと手渡した。

一瞬驚いた彼女だったが、封筒を握る手は強かった。


その後夜ご飯を家族と食べたが、会話はいつも通りになかった。
初めてそれが有難いことに感じた。

親を裏切るという罪悪感よりも、もしかしたらもう一度“色男”に会えるかもしれないというワクワクの方が勝ってしまっている私に、普通の会話などできるはずもないからだ。


ご飯を食べ終わった7時を過ぎた頃、裏口から抜け出し、ササの家へ向かった。

心臓がバクバクと音を立てる。

親に見つかるか、彼を見つけるか。

初めて私を襲うスリルに手汗が止まらなかった。