香水を探していた時の私の勢いはすっかりどこかへ行ってしまった。

「この堅物ベニ子を落としたんだから相当な“色男”なんだろうなあ。
さあ、行くよ!」

ブラウニーを完食するなり早々に店を飛び出した私たちは、“色男”を見かけた場所を訪れた。


「ここで見たの?」

若干顔を歪ませたササ。
一体どうしたというのだろう。

訳が分からず頷く私の耳元で静かに囁いた。

「ここら、キャバクラ街だよ」


そんなこと、私だって知っている。

派手でゴージャスな建物が並ぶこの場所を商店街だと勘違いするほど馬鹿ではないし、私のいつもの帰り道だ。


「なんでそんなキョトンとするのよ。
だから、ベニ子の好きな人はそっちの業界の人かもしれないって話よ!」


そう言われてみれば一理ある。

あの忘れもしない闇をも持つような妖美な雰囲気は、夜の街に良く似合う。

隣にいた女性も、キャバ嬢をしていたと言われても疑わないほど綺麗だったし。


「…なんか更に遠くの人感が増したんだけど」

それと同時に、夜の繁華街とやらに興味を持った。

「ねえ、私今ベニ子と同じこと考えてる自信あるよ。
今夜、ここ来てみない?」