このカフェには、ササとよく来る。

高校に近いにも関わらず、客が少ないからだ。
その原因はここのマスターにある。

カフェのマスターと聞いて思い浮かべる要素からカフェのマスターと聞いて思い浮かべる要素を抜いたような人。

まあ一言で言えば見た目が怖い。

ただそれだけで、喋れば普通の人なんだ。
ササに言わせれば口調も怖いらしいが、私にはそうは感じない。

オマケにササはここのチョコブラウニーに恋している。


ここまで来れば逆に通わない理由は見つからない。

そんなお店で今日も穏やかにチョコブラウニーをふたつ頼み、やっと本題に触れた。


「え、ベニ子が、こ、ここここ、恋!?」

「ねぇ口からポロポロ落ちてるから、」

「いやだって!!」


相手が妻子ある人だということよりもまず私が恋心を持ったことに驚いたササ。


「なんたって私はベニ子の名付けの親だからね。
初めて私が話しかけた時顔が一気に紅く、」

「もういいからその話は!」


そう、私はもちろん、本名がベニ子なんて訳もなく平凡な名前を持っている。

だがしかしササが赤面症私をベニ子ベニ子と呼ぶものだから、クラスでは定着してきている。


「そっかーベニ子が恋、ね…」

「で、でも…。
もう会えないし、に、匂いも見つからないし…」

「は?匂い?
てかそんなことよりその人の特徴ってないの?
女の方の特徴でもいいし」

「え、そんなん知ってどうするの」

「どうするって、何寝ぼけてるの?
探すのよ」


…探す?