1分

5分

10分

30分


「ねえベニ子、かれこれもう30分経つよ。
それっぽい人いないの?」


路地に腰をかけ、通行人の中から見つける、というなんとも単純なササの作戦に乗った私。

だがしかし冷たい深夜、雪にさらされている状況にとうとう繁華街どころじゃなったらしいササ。

私はと言うとまだ諦めてはいなかった。


目を凝らし人混みの中にあの微笑みを探した。



「ねえ、君たち暇?」

キャバクラの客だろうか、薄毛なおっさんが汚らしい声をかけてきた。

ツンと香る加齢臭に、アルコール臭。

「いえ、忙しいです」

アタフタとするササをよそに、私はおっさんをあしらった。

が、それでも諦めないのが酔っ払いだ。


そろそろ絡みがうざくなってきた。
肩に手をかけられてベッタリされたんじゃさすがに対抗しきれない。


ササが帰ろう、と目で訴えてきてるのがわかった。

私もそうするのが賢明だと、腕を振りほどこうとするもなかなか剥がれない。

黒く伸びた爪を私の鎖骨にあて、つんつんとつつくのが気持ち悪かった。