「うあー、きっついなー」


そんなことをほざきながら彼は立ち上がる。


「もう行くの?」

「うん、そろそろ帰らないとねー。出張って言ってるんだから」

「出張の人が酒臭い息で帰っていいの?」


傷つけばいい

現実を思い出して傷つけばいい

そうして──────────あたしの所へ泣きつけばいい


「良いんだよ、奥さんも今ごろ家にいないからねー。多分元カレあたりとよろしくしてんじゃないのー」

「なんで別れないの?」

「好きだから」



食い気味に、真っ直ぐに彼はそう言った。