戸波さんから抱きしめてくるなんて、想像も付かなかったし、なによりありえないと思っていた。
しかも、セクハラが酷くて嫌やった話をしたあとになんて、普通の神経なら絶対にしない。
戸波さんも、わたしを好きやからそうするんだ。きっとそう。
ねえ戸波さん好きだよ、
今こういう話の流れだから言えないけど、
セクハラ辛かったって話して、
なぐさめて抱きしめてくれるあなたが好き。
あなたに抱きしめられたら、水瀬さんの
どうでもいいお触りなんて全て消える気がする。
いろんな気持ちが入り混ざって辛かった。
気づけば深夜の3時過ぎ。
俺はええけど、お前は寝なあかんから帰り。
明日も大事なお客さんつくんやろ?
頑張らなあかんのに、目腫らしてたらあかんよ。
また話聞いたるから。今日は帰り?
部屋帰って、着替えたりとかせなあかんやろ?
な?やから今日はもう寝よ?
や、もちろん俺は大丈夫やけど。展示会期間は酒でオールとかよくある話やし。
ほんまにお前に寝てほしいだけ。
……わかりました。
やけど、明日たぶん水瀬さんの顔みたら怖くてどうしようもない気持なると思う。
あかんけど、こういうのは、あかんけど、、
明日頑張れたら、褒めてください。
褒められたくて仕事するなんてあかんけど、
ちゃんと頑張れてたら、褒めたってほしいです。
それやったら明日も頑張ろて今思える。
ええよ。お安い御用やわ。
やけど、仕事なんやから、ほんまに酷い顔しとったらあかんで?
やばい顔しよったら口きいたらんからなー。
ふふ、わかりました。かえります。
あと1回だけ、おかわりください。お願い。
なにを?
だっこ、してほしいんです。
すごい気持ちよかったから。
しゃーないなぁもう……。これっきりやで。
戸波さんの温もりが身体に伝わる。
ちょっとだけタバコ臭い戸波さん。
それすらももういい匂いに感じてしまう。
ありがとうございます。嬉しかったし、すっきりしました。
ほんならよかった。ゆっくり寝や?
部屋に帰って、急いで寝る支度をした。
ドキドキして眠れんかと思ったけど、泣きつかれたのか、色々あって疲れたのか即眠りに落ちた。
3時間足らずの睡眠やったけど、随分とぐっすり寝た気がした。