それ程の、衝撃だったんだ。

 悪意だけで嫌がらせをしていると思っていたヒロが、あんなに強い信念を持って動いていた事が。


「敵わない……」


 ぽそりと呟いた言葉は、雑踏の中へ消えていった。


「――――和泉!」


 その時だった。私を呼ぶ、大きな声が聞こえた。びっくりして立ち上がり、声の方向へ振り返る。

 すると、そこにいたのは真っ直ぐにこちらへ向かって来る青葉。


「和泉!」

「あ、青葉?!」


 青葉は私のそばまで来ると、身体を折り曲げハアハアと荒い息。私と同じように、どうやらティアーモから走ってきたみたいだ。


「どうして青葉がここに来たの?!」

「どうしてって……お前がヒロを追って、店を飛び出してったからだろうが!」


 心配して、来てくれたんだ……


 どうしてだろう。青葉の顔を見ただけで、さっきまでの気持ちが変わってゆく。ヒロに圧倒されて、後ろ向きになってしまった心が、息を吹き返すように。


「ヒロの奴に何かされたのか?!」

「う、ううん……大丈夫だよ」


 そう答えると、何故か青葉は不信そうに顔を歪めた。


「……じゃあ、何で泣いてるんだよ」


 泣いてる……?