「…夢。」

「あ、藤真君。」


藤真君のお母さんについて、洋室の一室にいたあたしの名前を部屋のドアから呼んだ彼を見る。


濡れた髪に肩からタオルをかけたまま、

白いビッグサイズのロンTにスウェットのパンツを履いたラフな格好で、

明らかにお風呂上がりの匂いをさせる彼に、


「夢?」

「あ、うん。」

「風呂、入って。」

「あ、うん。」

「…ん?」

「え?」

「…さっきから、『あ、うん。』ばっかり。」

「…だって、」

「ん?」

「なんか、…テレる。」

「…。」

「あ、あの、お風呂、お借りします。」


藤真君の返事がないことに、余計なことを言ったと気づく。


藤真君と藤真君のお母さんに小さく頭を下げて、さっき教えてもらったお風呂に向かう。


洗面所の、シャンプーの香りが、


…てか、さっきまで藤真君が入ってたんだよね。

ヤバいっ。変態ちっくな思考だっ!


なんて、またあたしを焦らせる。


結局、湯船に浸かることも出来ずに、


急いでシャワーを浴びたのに、逆上せたみたいになってしまった。