「だったら、家に行こ。」

「え?」

「行くよ。」

「…、」

「…ほら、早く。」

「…藤真君?」

「ん?」

「なにしてるの?」

「それはこっちのセリフ。
ほら、早く乗れよ。」

「……なんで?」

「なんでって、…足、痛いんだろ?」


行こうと言った藤真君が、あたしの前で背中を向けてしゃがんでいた。

あたしの足に気づいてくれていたことを嬉しく思ったり、

藤真君の用は結局いいんだろうかとか思ったりしたけど、


肩越しに振り返り、そう言った藤真君に、


「無理。」

「ん?」

「無理。」

「…なんで?」

「っ、だって、だって恥ずかしい。」

「…いいから。暗いからわかんねーよ。」

「…それに、重いもん。」

「大丈夫だろ。」

「…大丈夫じゃない。絶対。」

「…平気だって。俺男だし。」


それでも。

好きな人におんぶされるなんて、心臓ドキドキだし。


渋るあたしに、


「紗也よりちっさいんだし、大丈夫だって。」


……確かに、紗也さんより小さいけど。

…紗也さんより小さいあたしだから平気だって?

そっか。紗也さんをおんぶしたことあるのか。

そりゃそっか。ずっと近くにいたんだもんね。

そうゆうことも、あったのかも。

今も、紗也さんが怪我したら、きっと迷わず紗也さんを助けてあげるんだろうし。