ズキッ。


…痛い。


前をよく見てなかったらしい紗也さんがぶつかりそうになって、


慌てて藤真君が助けに入った。


まるで、お姫さまを助けるヒーローみたいに。



「もうちょっと落ち着けよ。」

「っう、るさいなぁ。」


2人のやり取りに、走った足だけじゃなく、

胸も痛む。


「気を付けるから!
夢ちゃん、ごめんね。」

「…いえ。
なにもなくて、良かったです。」


紗也さんにそう伝える。


「…予定ない?」

「え?」

「ないなら、紗也に付き合ってやって。」

「あ、…うん。」


なんて、優しく言うんだろう。


藤真君の、紗也さんへの想いは伝わらないのかな。


あたしの想いが届かないなら、せめて藤真君の想いだけでも、そう思ってしまう。


でもそうなると大樹先輩の想いが届かなくなるのか…。


なんだか、難しいな、恋愛って。