バイキングを終えて店を出ようとして、


今にも降りそうな雨に気づく。


ホテルのロビーを通りながら紗也さんが、


「このあとどうする?
近くのカラオケでもいく?」


どこへ行くか提案してくれる。


でも、


「夢。」

「ん?」

「帰ろう。」

「…。」

「雨、降りそうだし。」

「…うん。」


大樹先輩に言われて、ダメなあたしに気づく。


場の雰囲気とか、楽しいから帰りたくないとか、


そんな事言って皆といたら、


結局迷惑かけて、後で自分が落ち込むだけなのに。


「…あ、なんか、予定あるの?」


心配そうに紗也さんに聞かれる。


「あ、…はい。ごめんなさい、誘ってもらったのに。」

「あ、ううん。
でも残念。また行こうね。」

「はい、ぜひ。」


そう話して、


「藤真君も、ありがとう。
またよければ誘ってね。」


そう言えば、


「やだ、なんでそんな他人行儀なの?
付き合ってるんだから、誘うに決まってるよね、藤真。」

「…紗也、うるさい。」

「なにがよー。」


いつもの2人の会話を聞いて、この2人の間に入るのは無理かな、なんて再確認したりする。


今日は少し近づいたと思ったのにな。