「お母さんは、…好きだったの?あの人のこと。」

「…そうね。…わからない。」

「…わからない…?」

「いつも忙しくて、いつも家にいなくて、家族らしい事なんてしたことなかったわ。」


…確かに、あの人があたしの運動会や参観日、習い事の発表会なんかに来てくれた事なんて一度もない。

ご飯ですら、一緒に食べたのも数少ない。

今思うと、あの人が家にいた事なんてほとんどなかったんじゃないかと思う。


「好き、なんて思う対称になかった。」


そうなんだろう。別に驚いたりしない。

だって、お母さんには別に好きな人がいるんだと、

あたしはその人との子供なんだと、ついさっきまで思っていたんだから。

だから、あたしはあの人の子供だってことに、

実はかなり動揺してたりする。