元々、海外生活も多かったお母さんの両親と兄夫婦は、お母さんが結婚してからも海外にいる方が長くて、

お祖父さんがリタイアしてからはマレーシアに移り住んでいたらしい。

それを、あの人は知っていたんだろう。

でも、お母さんは知らなかった。


実家が人手に渡ったことに愕然とし、

今は日本に住む兄夫婦に連絡をとり、両親の居場所がわかる。


あたしに話をしようと一度家に帰るも、

あたしもあの人も帰って来なかったと。


そうだ。

だって、あたしはあの日、階段から落ちて怪我をして手術の真っ最中だったから。


後から知ったお母さんは病院に来てくれたらしいけど、


「追い返されたわ。」 

「…、」

「子供が大変なときに何をしていたんだ、って。」

「…そんな、」

「また男といたのかって、…大声で病院で怒鳴られて、…わざとそう言ったのよ、あの人。」

「え、」

「あたしが、この街にいれなくなるように。
夢が白い目で見られるかもしれないと、側にいれなくなるように。」