「紗也ちゃん。」

「…、」

「…誤解させてごめん。」


立ち上がって、ドアの向こうの紗也さんに向かって大樹先輩が声をかける。


「…、誤解、じゃないんじゃないの。」

「え?」

「…夢ちゃんのこと、…いつも心配なんでしょ?
気になるんでしょ?」

「…それは、」

「夢ちゃんが、好きなんじゃないの?
…あたしより、夢ちゃんのこと、」
「紗也さん!」


誤解させてしまった。

違うのに。

大樹先輩の頬が幸せそうに緩むのは、紗也さんのことを考えている時なのに。


「…っ、夢ちゃん。」

「ごめんなさい、話の途中で。
でも、違うんです。あたしが大樹先輩を頼ってしまって…、誤解なんです。大樹先輩の話を聞いてもらえないですか?」


きっと、大樹先輩のことだから、あたしのことを紗也さんに言わずにいてくれたんだ。

このままじゃダメだ。


「夢?」

「大樹先輩。
…紗也さんに、話をして。」

「でも、…、」

「大丈夫。なんであたしを心配してくれてるのか、ちゃんと紗也さんに話して。」