驚いたのと、嬉しいのとで、


テンションが上がったあたしは、


「田村君。」


そう呼びかけて、


少し振り向いた彼に、聞いた。


「藤真君って、呼んでもいい?」


「………ああ。」


「あ、ありがとう。」


「ありがとう?」


「あ、うん。……呼べて、嬉しいから。」


「………そ。」



短く返事した藤真君は、またすぐ前を向きなおして、


ザッザッと歩いて行った。


慌てて、必死についていく。


「あ、あたしの事も、“夢”でいいよ。」


「………。」


返事はなかったけど、それでもよかった。


藤真君が迎えに来てくれた。

名前呼びさせてくれる。


それだけで充分だった。



怜奈ちゃんには、「どっちが告ったのよ。」なんて少し呆れたような顔をされたけど、どっちでもよかった。


だって、きっとあたしの方が彼を好きだから。


愛情を測るのはむずかしいけど、


あたしの方が彼を想ってる、きっと。


それにね、怜奈ちゃん。


あたし、付き合ってとは言われたけど、


好きだとは言われてないんだよ。