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「…っ。」


バスルームの鏡に写る自分の顔を見た。

退院するまで、鏡を見せてくれと頼むことも出来なくて、

見たところでガーゼが貼り付けてあるおでこや口元じゃ、どんな顔かははっきり分からなくて、

直視するのがまだ怖くて、

窓に写る自分の姿をボーッと眺めていただけだった。



まだ治らない傷と精神的苦痛を癒すのに、お医者さんは退院に反対したけれど、

あの人は退院を強行した。


『自宅でしっかりケアします。』


一瞬、誰が話したのかと思うほどのよそ行きの顔と声で、そう言った。


きっと、何度も病院に呼び出されるのが煩わしかったんだと思った。

 

初めて、しっかり自分の顔を見た。