大樹先輩に渡されたパーカーとスウェットパンツを持ってバスルームに向かう。

大樹先輩の家は、玄関を入れば右側に独立したバスルームとトイレ、左側には小さなキッチンと冷蔵庫、洗濯機があった。

その奥にドアがあって、ロフトとクローゼット付きのごく普通のワンルームだ。


何回か部屋を貸してもらって、あたしが着替えたりする時、

大樹先輩は用事を作って外に出て行ってくれたり、お茶を入れたりしてくれていたけど、

寒い中、外で待ってもらうのは気が引けるし、

それに少し、傷の具合を確認したかった、っていうのもあった。

いくら誰も見てないといっても、やっぱり他人の部屋でお腹をさらけ出してじっくり見るなんて出来ないし。


「あ、」

「ん?」

「あの、…マスク、ある?」

「んー、…ないな。買ってくるよ。」

「あ、…ううん。ないなら、いいんだけど。」

「…大丈夫、夢はそのままで充分可愛いよ。」


少し、悲しそうな顔でそう言った大樹先輩に、


「…え、なんかやだ。」

「え?褒めたのに?」

「褒められた気しないよ。」

「え、嘘。」

「ほんと。むしろ傷付いた。」

「え!なんで?」

「だって、絆創膏だらけの顔が充分だなんて。」

「…確かに。」

「ほら。」

「いや、でも、そんな顔もあえて可愛い、みたいな?」

「なにそれ、意味わかんない。」

「いや、夢ちゃん?
んー、なんて言うの?ほら、」


大樹先輩が、あたしの悲しみを軽くしようとしてくれるから、あたしも沈まないように明るく振る舞った。