「夢。」

「…でも、…でも、」

「いいんだよ。」

「…、」

「俺が、帰したくないんだ。
紗也ちゃんのことなら心配しなくていい。ちゃんと、誤解ないようにするから。」

「…っ、」

「夢。」

「…ごめん、なさい。頼りっぱなしで。」

「家ってのはさ、落ち着いて、安心できる所だろ?」

「…、」

「こんなに、震えて帰るようなとこじゃないだろ?」

「…。」

「そんな所はもう、家って言わない。
傷付けるだけのやつを、家族って言わない。」

「…っ、」

「夢に覚悟があるなら、俺も力になるよ。」

「覚悟…、」

「あの家を出る覚悟。」


震えるあたしの手を握り、あたしとしっかり目を合わせ、そう言ってくれた大樹先輩に、

あたしは静かに頷いた。