「酒、ないのか。」


二時間くらいして、父親がフラフラと家を出ていった。


お酒を買いに行ったのかも知れない。


あの人はお酒に弱い。


普段忙しいようだし、睡眠不足もあるんだろう。


あたしを見もせず、出ていった。



…逃げよう。


今のうちに家を出れば、帰って来た父親にまた殴られる事もない。



お母さんが出ていった後、お酒に酔ってはあたしを殴り付けるようになった父親。


でも、たまに帰って来た時にも、出会さなければ怒鳴り散らされることはなかった。


じっと部屋で黙って過ごしていたり、父親がいない隙に慌てて家から逃げ出したりもした。


今回や前回みたいに、父親に直接連絡がいくような事さえなければ、父親の仕事を邪魔しなければ、回避出来ていたのに。



辺りを警戒しながら、まだ痛む体を引きずって家を飛び出した。