リビングのソファに座ってお酒を飲む父親の後ろ姿を、


後ろの壁に背を付けて立って眺める。




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中学3年の夏が始まるくらいの時期、


お母さんが出ていった。


あたしの両親は、いわゆる政略結婚らしかった。


父親は、新しく始めた事業を成功させるためで、

お母さんは、親が決めたことに反対できないような家で育った人だった。


お互いに愛情もなく結婚して、


あたしが産まれた。


だけど、お母さんはあたしを愛してくれていたと思う。


お母さんとは、お母さんがあたしを置いて出ていったあの瞬間まで、2人でいつも楽しく過ごしていたから。


父親は、あたしがいてもいなくても、自分優先の人だった。


家族に興味もなく、仕事1番の人だった。


それでもまだ、あの頃は穏やかに過ごしていた。