念のため検査を受けたあたしに、婦人警官は、


「これは、事件だから。訴えるか、よく考えて。」

 
そう言い残して部屋を後にした。



一人、ベッドに取り残されて、ゆっくり目を閉じた。


事件。…レイプ未遂の、…。


痛む顔や、お腹。

まだ耳に残る、笑い声や息づかい。


身体が震えているのが分かる。


…怖かった。ほんとに。ほんとに、怖かった。


まさか自分がこんな目にあうなんて思っても見なかった。


きっと、このベッドを離れれば、もっと恐怖が襲ってくるんだろう。

今まで通り、なんてこと、できないのかもしれない。





でも、今はそれより、このベッドにいる状況がどうゆうことを意味しているのか考えて、また心が重く沈んだ。



「…また、面倒事を起こしてくれたな。」

「…ごめん、なさい。」



退院の日、現れたのは、心配なんて表情をいっさいみせない父親だった。


あたしを、更に絶望に追いやる運命を恨んだ。