そのあとは、少し緊張もほぐれて、藤真君と話す事が出来たと思う。


「あのアーティスト、好きなの?」

「ん?ああ。…夢も聴く?」

「!いいの?」

「ん。」


今まで噂で聞いた、“らしい”が、藤真君が答えてくれることで、本当に変わる。


「毎日、…告白されてるって、本当?」

「……。」

「…そうなんだ。」

「関係ないよ。」
 

…関係ない、か。

彼女、なら気になるのは当然だと思うけど…。 


「彼女は、夢だから。」

「え!」

「え?」

「…、」


…な、え、…。


どう解釈すればいいんだろう。



藤真君が紗也さんを好きなのは変わりないことで、

でも、紗也さんを応援する為にあたしと付き合ってて、


虫除け的な?

そんな意味かな。



好きな人に好きな人がいると言う立場のあたしには、

相手の発言に、あたしへの感情があるなんて、微塵も思わない。

むしろ、深く考えて、悲しくなるのをひたすら避けようと思ってしまう。

だから、藤真君の言葉を深く考えないようにした。


幸せな今の時間を、大切にしたい。

どうせもうすぐ別れの時がくるんだから。