「…こっち。」

「え?」

「こっち、来て。」

「…。」

「…。」

「あ、…うん。」


ドアを閉めて、振り向いたら彼と目があった。

反らせずにいたあたしに、表情も変えず藤真君は言った。


緊張して、ドキドキしてるあたしに反して、

あまりにも普通な藤真君に、

少しだけ、ガッカリした。



あたしが好きなわけじゃないことは分かってる。

別に、ドキドキしてほしいとか、何かが起こるかもだなんて思っていない。

いや、そりゃちょっとくらいは思ってるけど。

でも、こんな風に、ひとつの部屋にいて、

仮にも、カレカノで、

あたしに少しも興味を持ってない、みたいな態度は、

やっぱり寂しかった。


あたしは、彼の近くにいるだけでドキドキしてるのに。

何でもないことのように言った藤真君に、

ガッカリした。