「藤真には弟がいてね。」

「…はぁ。」

「桜汰(おうた)って言うの。」


あ、さっき聞いた名前だ。


「桜汰は中2でね。
明るくて、なんかこう、ふわふわしたこなんだけどね。」


…ふわふわ…。


「いつもニコニコしてて、なんでも、中学ですごくモテてるみたいでね。
彼女みたいな子も何人か連れてきた事があるのよ。」

「…はぁ。」


まぁ、そりゃあ、目の前の人と、今、自室にいる人を見れば、最高な遺伝子は容易に想像出来る。


「でもね、藤真は今日が初めて。」

「…え?」

「あの子の彼女を見たのは、夢ちゃんが初めて。」


…あ、そう、なんだ。


嬉しい、そう思ってすぐ気づく。


…お母さんが知らないだけなのかも。

藤真君は、紗也さんを好きなんだから。


家が隣同士の2人は、行き来するのが当たり前で、 

親が気付いてないだけで、


藤真君にすれば、ほんとは紗也さんを彼女として紹介したかったはずなんだ。