「…夢ちゃん。」

「はい。」

「見せて、左頬。」


…っ、どうしよう。

言葉に詰まる。


藤真君が先に上がったのを確認してから、リビングのソファに座るように言われその通りにした。

あたしの顔を真剣な目で見て、


「どうしたの?左頬。腫れてるわよね。」

「…っ。」

「…誰かに、殴られたの?」

「…いえ。」

「…お家に帰れない理由と、なにか関係がある?」

「…いや、ないです。」

「…とにかく、冷やした方がいいわ。」


そう言って立ち上がって、冷蔵庫から保冷剤を取りだし、タオルでくるんだものを渡してくれた。


「…ありがとう、ございます。」

「…無理に、聞こうと思ってないの。」

「…。」

「あたしね、結婚前は警察官だったの。」

「えっ!?」

「ねっ。意外でしょ?」なんて笑う藤真君のお母さん。


こんな可愛らしい家に住んでる綺麗な女の人が、

まさか男の人に交じって、そんな大変な仕事をしていたなんて、誰も思わないと思う。