俺達は春休みを使って、親睦を深めていた。
「これから毎日一緒なんだから、仲良くしないと」とかなんとか田中さんに言われていたのもあるけど、俺が彼女といたかった。

お嬢様の名前は上間凛。

響きがまりんに似ていて、最初は戸惑った。
呼ぶたびにまりんや施設を思い出しそうで躊躇した。

でも

「凛って呼んで? 翔護。
周囲には、名前で呼んでくれるあんまり人がいなくて寂しくて。

お嬢様扱い、嫌なんだよね」

と散々おねだりされて、俺は戸惑う気持ちを抑えつつ、彼女を「凛」と呼び始めた。

とは言え屋敷の大人にバレてはいけない。
お嬢様を呼び捨てなんてもっての外だ。

二人きりのときに、こっそりだ。