「玲はやっぱり涼なんだな...」

ドアを開けると向かい側の廊下で懐かしいメンバーが話していた。
俺、玲、涼、智秋、永司。いつも5人で行動していた。
10年前、俺が玲と別れてから俺は4人と距離を置くようになった。
同じマンションの同じフロアに5人が集まった。
普通に話しかけていけたら何か変わるのかもしれない。
でも、無理だった。玲には涼がいるから話しかけられない。

「明貴センパーイ!」
「あ、千佳ちゃん」

社長の付き人で元カノの千佳は2階上のフロアに住んでいた。
出勤時間が重なる時はいつも迎えに来てくれる。

「偶然階段からセンパイ見つけたんで、迎えにきちゃいました...。
...?センパイ元気ないですか?」

(玲とよりを戻したい)
そんな事言えるわけがなかった。きっとこの子は俺の事が好きなんだろうと思う。

「ううん、大丈夫」
「昨日、弟から急にメールが来たんですよ!で、その内容が...」

玲といたのは10年前。ケンカ別れで俺が出ていった。でも忘れられなくてこんな近くに部屋を借りた。俺と別れたあと、玲は誰とも付き合っていない。
俺との事覚えててくれているのだろうか。

「...センパイ!明貴センパイ!」
「あぁ、ごめん。ちょっと今日休んでもいいかな...」

こんな気持ちで会社にいっても後輩にアドバイスできるはずがなかった。

「このフロア人多いですし、私の部屋来ますか?」
「千佳ちゃんに悪いよ」
「大丈夫です、私のことは。それよりセンパイのことの方が心配です」
「ありがと」

〈ガチャ〉

「入っていいですよ」

玲の部屋と同じ間取りだった。忘れたはずなのに今になってはっきりおもいだしてしまった。

「どうしたんですか?」
「昔の楽しかった頃に戻りたいなって、玲といた時に」

こんな事言ったら千佳を傷つけてしまう、と頭では分かっていた。
なのに口が勝手に動いていた。

「そうですか...(センパイの心の中に私なんていないんだろうな)
で、でも!きっと玲さんだって覚えてくれていると思いますよ。
それに、辛い時は私を頼ってください」
「千佳ちゃん...?」