ただ、それを伝えることはできない。


だけど向こうは違う。

わたしはこんなに好きなのに、天ヶ瀬くんにはそんな気持ちこれっぽっちも無いと思う。


そもそも、わたしはもう自分の気持ちを伝えるチャンスを潰しているのだから。

それははじめからわかりきっていたことだったのに。


「返すって……別に天ヶ瀬くんは唯乃さんのものってわけじゃ……」


ずっと黙ったままも不自然だと思い、ようやく口を開いた。


「違うわよ?だってゆづくんはずっと昔から唯乃のものだもん」

「え……?」


「ゆづくんは唯乃のことが好きで、唯乃もゆづくんのことが好き。だって付き合ってたから」


ガンッと、頭に衝撃がきた。
頭が真っ白になりかけて、言葉を失いそうになる。


心臓はいつもより変に音を立てながら、身体中の血液がドッと流れ始めて、おまけに汗まで出てきて、手が震える。