シンちゃんの全ての基準は私だった。百合がいれば楽しい、百合がいれば何もいらない、百合が、百合が、と寝ても覚めても百合。

 彼を形成する材料の8割は百合と言っても過言じゃないくらい、私は愛され、求められ、必要とされ、言い方を変えれば依存されていた。

 同時に私もそれを受け入れていた。
 シンちゃんから強く求められることで自分の存在価値を見出していたし、シンちゃんには私しかいないんだと思い込んでいたから、共依存と呼んだほうが正しいかもしれない。

 愛とかうまく語る自信はないけれど、この頃の私は心からシンちゃんを愛していた。
 しかも無償の愛に近く、彼に見返りを求めたことは一度もない。
 というより、見返りを求めても与えてくれるのは愛情だけ。

 電気代も水道代も、食費も全て私が捻出し、それでもお金が足りないときは親に頼み込んでいた。もちろん、シンちゃんの存在はひた隠しにして。

 愛さえあれば何とかなる。心からそう思えていたのは最初の1年くらいだ。シンちゃんは幾度となく転職を繰り返し、無職の期間のほうが長くなっていった。