納品を終えたのは注文から1週間後だった。

「え、もう出来たんですか?」

 桐生さんも先生も驚いていた。

 多少、睡眠不足になりはしたけれど、達成感のほうが大きかった。
 これまで生活のために必死にやっていたことが、楽しみながら着手できたこともあるし、自分の作品がその世界では有名な先生のお店に並ぶ光景を想像すると、純粋に胸がときめいた。

 しかも一つ1200円程度でこれまで販売していたネックレスを5000円から8000円で取り扱うという。

 私は1200円で結構です、と申し出たが、一つに付き2000円お支払いしますと言われ、合計6万円を現金で受け取ることになったのだ。

 その夜はシンちゃんと久しぶりに焼き肉を食べた。

「百合すごいじゃん」

 同じ言葉を口にしては、美味しそうに肉を頬張るシンちゃんは無邪気にはしゃいでいた。

 次の日、シンちゃんが「お祝い」と言って、ユリの花束を買って来た。
 その花代は、昨夜シンちゃんに「お小遣い」と称して渡した5000円からだった。

 なんで花を買っちゃうのかな―――

 お昼ご飯代にするとか、貯金するとか。あれこれ思いついたけれど、辞めた。

 そういうことを思ったところで仕方がない。
 これがシンちゃんなんだ。