パチンコがどうやっても辞められないらしい。
　私はもう諦めていた。あれこれ言うのもエネルギーを消耗させてしまう。
　ただでさえ狭くて息苦しい部屋を、沈黙と溜息で圧迫させたくない。

　私はすっかり仔犬の躾を放棄していた。

　ワイヤーにビーズを通していると、目がひどく疲れていることに気が付いた。

「休憩しよ」

　そのままベッドに転がると、眼球の裏側がじんじんと鈍痛を放っている。

　桐生さんに初めて会ったのは3日前だった。

「空間デザイナー」という何だかよくわからない職種の桐生さんは「お金持ちそう」な雰囲気を持っていた。

　空間をデザインするだけで、見るからに上質なスーツを着られて、高級車を買えるほど稼げるものなのか、と驚愕してしまった。

　お金持ちの人特有の物腰の柔らかさや品の良さ、そういうものに触れる機会がなかったこともあり、革張りの助手席に座っていても心地悪くて仕方がなかった。