当時、総合病院で医療事務をしていた私は常に睡魔との戦いだった。

 眠いというより怠い。
 それもそのはず、日中は仕事、帰宅すれば家事に追われ、隙間時間を見つけては、ハンドメイドのアクセサリー作りに励んでいた。

 あんなに身を粉にして働いていた自分を思うと、貴重な20代を随分棒に振ったように思える。

 元々細かい手作業が好きだった私は、趣味でピアスやネックレスなどを自作していた。
 でもそれは単なる趣味だったのに、当時の私は小遣い稼ぎのために必死の思いで指を動かしていた。
 楽しいなんて思わなかったし、ビーズやチェーンを見るのも憂鬱だった。

 けれど、職場の人、友達からはなかなか評判が良く「百合のアクセサリーってセンスいいよね」と注文をもらうことが多くなっていた。

 素人の作るアクセサリーだから高値販売するのは気が引け、一律1200円に設定していた。
 デザインにはこだわっていたので素材費を差っ引くと500円程度の利益だ。
 それでも月に10個の注文を受ければ5000円になる。

 5000円あれば水道代になるとか、55000円の家賃が5万円で済むとか、年間6万円になるとか、貧乏くさいことばかり考えていた。