「あいーしてるじゃああぁあぁ、足りないよおぉぉおぉ〜、もっともっと深いとこまでえぇええぇーー!!!」
「うるさい。」
「深いとこまでえぇえぇーー、へぶっ!!?」
「うるさいっつってんの。」
元気だなぁ、といつも通りの二人を見て表情が緩んだ。
僕の前を歩く太陽は自作物なのか、やたら音程が安定しない歌を大声で歌っている。
一方の莉亜はその歌が耳障りなのか凄く嫌そうな...いや、嫌な顔をして太陽を睨んでいる。
二人は小さい頃からの幼馴染で、こういう光景はよく見ることが出来る。
仲がいいと、僕は思う。
それを本人達に言ったこともあるけど片方は喜んでいたけど、もう片方は心底嫌そうな顔をしていた。
けどその頬が赤く染まっていたことを見るに、それほど嫌でもなさそうだった。
その事を指摘したら散々な言葉で罵られた。
それからは思わず口を滑らせそうになるのを毎回無理矢理押さえつけている。
だけど本当に仲がいいと思う。
太陽を見つければ、同時に莉亜も見つかる。
ほぼいつでも一緒にいるんだ。
それを仲がいいと言わずに何と言うんだろう。
「そうですか?私は結構その歌好きですけど。」
「だろー!?いやぁホント、碧だけだぞー?この歌の良さを分かってくれんの!!」
「いや、それはただ単に碧の感性が太陽と似てるってだけでしょ。」
「つまり変人。」
「それは分かるかも...」
「セナ...否定してくれよ...。」
僕がそんな事考えてる間にもさっさと話が進んでく。
太陽の歌が気に入ったようで今も口ずさんでいる碧。
変人と言い放った豪くんに、流石に言い過ぎとは思ったけれど、たしかにその通りだったりするんだよなぁ。
それに賛同した紫月さんに凹むように話しかける太陽が面白くて、つい吹き出しそうになってしまったのは許して欲しい。
だって、だるだると下げた腕とゴリラの真似をした顔で迫られてきたら誰だって笑うでしょ?
「おいぃ、修希、何笑いそうになってんだよー!!」
「あ、ご、ごめん...!だって、太陽がおもしろくて...」
「ふっ...!」
「セナ、今鼻で笑ったか...!?」
「いや、今のあんた見たら悪いけど誰でも笑うか呆れるかすると思う。」
「馬鹿かよ。」
「あれ、知らなかったの?」
「元からだったか。」
「酷くないか...!?」