「結婚指輪ですか?」

「ああ」

「でも会社の人たちに内緒にしてるし指輪をするのはやめようとふたりで話しあ…」

「俺たち契約結婚をやめてずっと一緒にいると決めただろう? 年明けにでもボスに話して職場にも公表しないか? もうコソコソと隠す必要はどこにもない。普通の夫婦と同じように堂々と指輪をして紗凪と時を一緒に刻んでいきたいんだ」

「聖さん」

「紗凪はどう思う?」

「私は……聖さんの意見に賛成です」

その気持ちに嘘はなかった。夫婦としての入りは確かに特殊だったけれど、聖さんと想いが通じ合った今、夫婦としての証を刻めることはこの上なく幸せなことだと思うから。

「ならば良かった。指輪をすることで男除けにもなるしな」

「え?」

すっと私の頬に伸びた聖さんの手。

「俺の最愛の妻に暁斗のような危険な男が近づいて来ないようにという意味だ」

キョトンとした表情で聖さんの方に視線を送れば、そこにはクッと口角を上げて笑う聖さんの姿があった。