「ここだ。さぁ、中へ入ろう」

「ここ、ですか?」

「ああ」

聖さんが私を連れて来たのは高級ブランドが立ち並ぶ通りの一角にあるジュエリー店だった。いったいここで何をしようというのだろうか?

「いらっしゃいませ」

見当も付かぬまま聖さんに手を引かれ、爽やかな香りが漂う温かな店内へと足を進めれば、ガラスケースの中にキラキラと輝くジュエリーが置かれていて、綺麗な女性店員の方が柔らかい笑顔で迎えてくれた。

「予約をしていた東條です」

「東條様ですね。お待ち致しておりました。こちらへどうぞ」

女性店員が奥の個室へと私たちを案内してくれてふたり並んでソファーへと腰を下ろした。

するとそこに別の店員が温かい紅茶とお茶菓子として可愛らしいマカロンを運んできてくれて私は軽く会釈を返す。

「聖さん、ここでいったい何を?」

店員さんが部屋を出て行ったのを確認してから小声で隣に座る聖さんに話を振ってみた。

「紗凪と一緒に結婚指輪を選ぼうと思ってね」

そんな言葉と共に聖さんの優しい笑みが返ってきた。