それから数週間が過ぎた。

「そろそろ聖さん、着く頃かな」

リビングの時計を見上げれば時刻は二十時を回っていた。最近の聖さんは裁判や調停が立て込んでいてその準備で帰りが遅い。

さっき聖さんから“今から事務所を出る”と電話があったから直にここに帰ってくるだろう。

私はキッチンに向かい、夕飯に作って置いたミネストローネのスープを温め出した。

そしてその間に今日のメインである鮭のムニエルを焼き始めて、付け合わせにと先ほど作って置いた水菜とトマトのサラダを冷蔵庫から出した。

聖さんと暮らすようになって料理を作るようになり徐々にだけどレパートリーが増え始めていたりする。

ーーガチャ

ひと通り準備を終え料理を並べ終わった頃、玄関のドアが開く音がして、私は小走りに玄関の方へと向かった。


「ただいま。玄関までとてもいい匂いがするよ」

「おかえりなさい、聖さん」

私が聖さんの元へ駆け寄れば、自分の方へと私を引き寄せて優しく抱きしめて、頰に軽くキスをした。外気に触れていた聖さんの唇は冷たい。

「今日のスープは野菜たっぷりのミネストローネです。冷めないうちに召し上がってください」

私は、そう言って聖さんからコートを受け取り、聖さんをダイニングへと促した。

「いただきます」

聖さんが家着に着替えてから、ふたり揃って夕食を食べ始めた。会社でも家でも毎日一緒にいるのに、あれだこれだと楽しい会話は尽きない。

「紗凪、また料理の腕をあげたんじゃないか? ミネストローネもムニエルもとても美味しいよ」

「そう言ってもらえたら嬉しいです」

「またぜひ作ってくれ」

聖さんのそんな言葉に私は笑顔でコクンとうなずいた。