心配して下さるのは嬉しいですが、毎回、乱射事件には巻き込まれませんよ。



「油断はすんなよ、凛。あんまり・・・俺の側から離れるな。」

「え?」



ため息交じりに言うと、私の手を取る瑞希お兄ちゃん。



「あ、お、お兄ちゃん!?」

「会場は混むから、迷子になるなよ?絶対に、1人で行動するんじゃないぞ?」

「あ・・・は、はい。」



そう言いながら、私の手を握りしめる好きな人。

彼が私に触れてくれることが嬉しい。

嬉しいけど・・・



(・・・・・・・どうしたんだろう・・・・?)



最近の瑞希お兄ちゃんは、ちょっと様子がおかしい。

優しいのは変わらないけど・・・・





(やっぱり、あの時から・・・・)




―陽翔の時は助けなかったくせに!!―




(あの女が原因だよね・・・?)



心当たりが胸をよぎる。




(・・・・九條アキナ・・・・・・)




龍星軍2代目総長・伊吹陽翔さんの彼女で、なぜか瑞希お兄ちゃん達を恨んでいる人。

初代龍星軍メンバーに迷惑をかけることを目標にしてる危険な相手。

瑞希お兄ちゃんに大事にされているということで、私を焼き殺そうとした過激な女性。



(まさか、陽翔さんのお墓にお供えしてあったお花が、アキナさんからのメッセージだったなんて・・・・)



後になって可児君から聞かされ、ゾッとした。

前回のファーストコンタクトで、良い印象はなかったけどそこまで恨まれる意味がわからない。

おそらく、伊吹陽翔さんの死が関係しているとは思うけど・・・



(考えて見れば、私は伊吹陽翔さんがどんな風に死んだのかも知らない・・・)



瑞希お兄ちゃん達は自分達のせいで死んだとしか言わないけど、詳しくは聞いていない。

聞くべきなんだろうけど・・・




―凛・・・わがままな俺を許さないでくれ・・・!―


(あんなことを聞いちゃったからな・・・・・・)



聞きづらくて、未だに質問できないでいる。

何でも教えてくれる瑞希お兄ちゃん達が、話さない話題だからこそ聞きにくい。



「凛の準備が出来たなら、行こうぜ!」

「って、あたしがまだよ!」



私がモヤモヤ考えてるうちに、周りの時間は進む。

瑞希お兄ちゃんの言葉で、私の側にいた和装じゃない人が叫ぶ。