「ヒューヒュー!暑いね、お二人さん!」
「うらやましい~」
「イマドキ、彼氏がいるアイドルって珍しくないもんな。」
「ばかね~フッチーなら、ゆくゆくは女優じゃない?」
「それもそうだな!」
「ねぇ、詳しく教えてよぉ~フッチー様!これからの芸能活動!」
「まだ仮決定だから、何とも言えない。わかったら話すわ。」
「絶対よ!応援してるから!」
「なぁ、今日はルノアのお祝いしないか!?店貸しきろうぜ!」
「クルーザーとかどう!?」
「いいな、ルノア。それにするか。」
「そうね。」
(そしてそのまま、沈没すればいいのに・・・)
金縛りのとけた指で、ページをめくりながら思う。
(渕上の芸能界デビューか・・・)
モデルしてたことも知らなかったけど、あの顔をテレビで見ることになったら、私・・・テレビを破壊してしまうかもしれない。
パンクバンドで、ベースを叩き壊す人みたいに、叩き壊しそうだよ、マジで。
(とりあえず、出てたらチャンネル変えるわ。)
そう心に決め、聞き耳立てるのをやめようとした時だった。
「さやか、めぐみ。G組の転校生のこと、知ってる?」
(G組の転校生!?)
その一言で、お祭り騒ぎが嘘のように静かになる。
渕上が自分からしゃべる時、周りは必ず黙るので・・・・離れた場所にいる入る私の耳にも、渕上の声がよく聞こえるのだろう。
しかしそんなこと、私にとってはどうでもいい。
問題は、渕上が口にした話題だ。
(転校生って言えば・・・ヤマトしかいないよね・・・?)
「G組の転校生?あ~そういえばいたね。」
「一学期に来た奴だよね?どうかしたの?」
聞き返す鳥海と難波に渕上は言った。
「そいつ、龍星軍の特攻隊長らしいのよ。」
(ぎゃああああああああああああ!!)
「「「ええええええええええええ!?」」」
私の心の悲鳴とは違った声が、周囲から上がる。
「うっそ!マジなの、フッチー!?」
「あの龍星軍のメンバーがうちの学校にいるの!?」
「あたしがウソ言うわけないでしょ?名前は五十嵐(ごじゅうあらし)ヤマト。大阪から来たんだってさ。」
(やっばい・・・・バレた・・・!!)
思いっきり身バレしてるよ!
〔★ヤマトの個人情報がもれた★〕